アルマたちと絆の樹(小説)

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アルマたちと絆の樹 第5章~ 

アルマたちと絆の樹(小説)

第5章 感謝と旅立ち

5月E




 桜が咲く季節が終わりやがて梅雨へと入る時期になった5月。
4人のアルマたちと守護魔、不思議な猫の姉妹たちが通うアミス先生の学校へと私レーヴェリスは向かっていた。
しかし、眠い・・・。
欠伸が何度も何度もかきながらも街を歩いていた。
『春眠暁を覚えず』とは言うが・・・
頭もボッーとしてるし、半分寝ぼけながら歩いているようなものだった。
そんな時だった。
「・・・ね・・・ちょ・・・いて・・・」

どこからか声が聞こえる。
耳鳴りだろうか?
そう思いながら歩く。
「ちょっと・・・まで・・・聞こえないの!!?」
いや、耳鳴りではなかった。
うしろを振り向くと一人の少女が大声で叫んでいた。
水色のツインテールヘアの髪留めは花の蕾に水色のワンピース、背中には綺麗で薄い翅をした少女だった。
まるで妖精のような姿をした少女にどこか見覚えがあるようだったが私は思い出せなかった。

「やっと、気づいたのねっ!遅い!おそーーーっい!」
「早く皆待っているわよっ!」
そう言って私の手を握って無理やり引っ張って行く。
何が何だかわからないまま、その子に連れられていく私。
ついた場所はアミス先生の学校だった。

「あんたがボケっと歩いているから」
「おかげでここに連れてくるのが遅くなっちゃたわ!」

「これでもレーヴェリスちゃんはとっても頼りになる冒険者さんなのよ」

そこにはもうアミス先生やアルマたちがいた。
皆が「おはよー」という中、私以外はリュックやらカバンやら大きな荷物を背負っていた。
これは一体何事なのか・・・?

「あんた忘れたの?これから皆で遠足に行くことをっ!」
・・・?
初耳だ、さらに言うなら君が誰なのかもわからない。
「まだ寝ぼけているの?私はサツキよ!5月の守護魔サツキ!」
言われるとだんだん思い出してきた。
そう、この子の名前はサツキ。
去年のことである、彼女は夢の中のダンプティーアイランドという場所で極悪の海賊たちに捕らわれ壷の中に押し込められたのを私が助けてあげたのであった。

「ね、ねぇサツキちゃん、もしかして・・・レーヴェリスちゃんに連絡回すのを忘れていたんじゃ・・・」
アミス先生の一言で「あ・・・」と気づくサツキ。

ほどよい沈黙が流れる中、サツキは何事もなかったようにアルマたちを呼ぶ。

(どうやら本当に忘れていたようだ)

「これからみんなで南アクロニア平原へ遠足に行くところなの」
「レーヴェリスちゃんが一緒に来てくれたら先生、うれしいな」

「南アクロニア平原ならモンスターとかはいないと思うけど」
「冒険者のあなたが護衛してくれれば、安心よね、たぶん」
「ま、わたしの足を引っ張らないでくれれば私は別にいいわ」

「みんな、遠足の準備ができたみたいね」
ダークフェザー、バウ、シャボタン、ローキーはそれぞれお弁当やら遊具を入れたリュックを持って並んでいた。

「えっ、これで全員なの?ムツキたちは?」
サツキは4人だけで他にいないのに驚く。

「ムツキとシャノワールは大事なクエストの途中だって言ってたわ」
「遠くまでお出かけするから、今日は帰れないかも、って」

「キサラギさんは、みるくちゃんに『すいーつ』を着せるっていっておでかけしたです」
「あと、『ごすろり』食べ放題にもいくっていってたです!」
「・・・わう?逆だったかもしれないです」
きょとんっとするバウ。

「ヤヨイさんとアカリさんは『バナナはおやつに入るか?』ってことで言い争いになってスポーツ勝負するんだって!」
「ずーっとラリーが続いてて とうぶん終わらなさそうなの」
「やっぱり、制限時間のある勝負をした方がよかったじゃないかなぁ?」
「でも、2人とも真剣だったし、本当は楽しんでいるのかも!」
シャボタンは嬉しそうに言う。

「あたしは学校を守るのが使命だから、今回は留守番するねっ!」

「私はここに留まってお掃除やお洗濯や備品の整理をいたします」
「先生、皆様、どうぞ楽しんできてくださいまし」
学校から唯一出て来たウヅキと浅葱は残ることを申し出た。


「みんなのこと、しかっり守ってね! さっちん!」

「・・・ウヅキ、あなたにはもう、何百回も言ったと思うけど、どうやら覚えてないみたいだから」
「もう1度言うわ、よく聞いて」
「さっちん言うな!」

「なぜじゃ?可愛らしくて、よい名前だと思うがの」

「ほら、のじゃーもカワイイって!」
「照れなくたっていいのに~!」

「照れてないっ!!」
逃げるウヅキを追い掛け回すサツキ。

「まあまあ、落ち着いて」
「ケンカはダメよ?」
「ウヅキちゃんと浅葱ちゃんが残ってくれるなら安心ね」
「お留守番、よろしくお願いするわ」

「いい?目的地は南アクロニア平原よ」
「・・・迷子にならないでよね?」
「それじゃ出発よ!」
サツキの号令で皆が「おー!」と叫ぶ。






というわけで南アクロニア平原へとやってきたアルマたちとアミス先生、サツキに私。
南アクロニア平原の気候は他の東西北とは違い少し暑かった。
吹き抜ける風も熱を運び、5月だというのに真夏のような暑さだった。
ここの街道を通る人は大抵は南国アイアンサウスからやってくる武器商人に鍛冶師といった職人が通る。

こんな暑い場所でもアルマたちは楽しそうに走りまわり遊んでいた。

「みんな、楽しそうに野原を走りまわってるわね」
「ふふっ、来てよかった」
「あなたも、小さい子たちの面倒を見てあげてね」
「・・・あら、ダークフェザーが何かを見つけたのかしら?」
たしかに何かを見つめているダークフェザー。
気になったサツキは様子を見るため向かった。

「みんなー あんまり遠くに行っちゃだめよ~」
アミス先生が遠くで叫び声もするように遠くにいかないようにアルマたちに言いに私も向かった。

「あそこに果物がなってる木があるわ」
「あれは何?」
ダークフェザーが指をさす、その木は少し黒い実をつけた木だった。

「あれはプルーンっていうの」
「実が柔らかいからちゃんと知識を持った人じゃないと潰れちゃってうまく採れないのよ」

「プルーンって、おいしいの?」
「それとも、毒消しの実みたいな味?」

「熟した実は甘酸っぱくておいしいのよ」
「後で食べさせてあげるわね」

「ありがとう、サツキ」
「楽しみね、ウィリー・ドゥ?」
「そういえば、バウがそろそろお腹を空かせてるんじゃないかしら?」
ダークフェザーが近くにいるバウを見ながら言う。
次はバウのもとへと駆け寄る。


「くんくん・・・この草、ほかの草とちがうニオイがするです?」
バウがニオイをかいでいたのは少し葉の先がギザギザした草だった。

「ああ、それはギコギコ草ね」
「蒸留水と一緒に『薬品合成』すると、スタミナポーションになるわ」

「すごいです!」
「サツキさんもお花のこと、いっぱいしってるです?」

「ええ、もちろんよ」
「わたしは花や植物の守護魔だもの」

「わうわう!シャボちゃんと一緒です!」
するとぐぅ~っとバウのお腹が鳴る音がした。

「ぼくは、ちょっとおなかすいたです!」
持っていたお弁当をもう食べ始めていたバウ。
「そういえば、シャボちゃん、どこですか?」

シャボタンは、さらに奥のほうでお花を眺めていた。

「あっ、見てみて!」
「お花がとっても綺麗なの!」

「シャボタン、花はなんて言ってるの?」

「今日はいい天気で気持ちいいって!」

「ふふっ、それだけじゃないわ」
「ほら、耳をすまして・・・花と葉だけじゃなくて、茎も根も意識してみて」

「あれ、あれっ・・・・!?」
「聞こえる・・・でも、なんて言ってるんだろう?」

「あせらなくてもいいのよ」
「あなたがまだ知らない言葉も、1つずつ教えてあげるから!」

「うわぁ、ありがとう、サツキさん!」
私には何が聞こえるのかわからないが不思議な音が聞こえたのは確かだった。
それはシャボタンやサツキも気づいた。

「・・・ッゴ・・・」
「・・・ッガ・・・」

「・・・やめ・・・」
「・・・ダメ・・・」
これは花や草が何かを言っているのではなく、誰かの鳴き声に何かを叩く音だ。


「今、どこかで誰かが泣いていたような・・・?」
「あっちの方かなぁ?」
「あっ、ローキーちゃんがいる!」
「何か知ってるかも!」
シャボタンが指をさす、さらに奥のほうにはローキーが立っていた。


「レーヴェリス様」
「待っておったのじゃ」
「ささ、ここに座って共に木々の歌を聞くのじゃ♪」

「ローキー!この辺で、誰か泣いているのを見なかった?」

「誰かが泣いておるとな?」
「いや、私は知らぬ」
「・・・それはともかくじゃ」
「のう、さっちん、何やら激しく、それでいて悲しげな太鼓と歌を奏でている」
「あの木は何という木なのじゃ?」

「ゴッ!」
「ガッ!!」
ローキーがさらに奥にある木を指さす。
あきらかに誰かが木を叩いていた。

「ええ、知ってるわ」
「あの木はね・・・」
「って、そんな木はないわ!」
「誰かが木を傷つけてるのねっ!?」
「急いで止めにいくわよっ!」
サツキは急いで向かったが急にローキーの元へと戻って来た。

「ローキー、それと1つだけ言っておくわ・・・」
「さっちんって呼ばないでよねっ!もうっ!」
「ほら、もたもたしないで行くわよっ!」
そして、再び木を叩くほうへと向かっていった。

「ふふ、さっちんは照れ屋さんなのじゃな♪」
私も何があったのか見に行った。

「ゴッ!」
「ガッ!!」

「やめなよ~ダメだよ~!」
一人の少女が釘を刺したバットを勢いよく振り回し木を激しく叩いていた。
それをオドオドとしながら必死にやめるように訴える少年がいた。

「ちょっと!なんでそんなことするのよ!」
サツキは、その少女に激しく怒鳴る。

やっと木を叩くのを止めた少女が振り向いた。
虎柄のパーカーに靴、黒いニーソックスにレイヤースカート、虎の尻尾に頭には耳をつけ右サイドだけ髪を赤いリボンで留めたセミロングの黒髪をした少女がギロッと睨む。

5月C



「うるさいですねぇ・・・」
「あんたらには関係ねーですから」
「・・・・それとも、この木、あんたのです?」
あまりにも威圧的に睨む少女に流石のサツキも少しビクッとする。

「わ、わたしの、ってわけじゃないけど・・・」

「だったら放っておいてください」
また叩こうとする少女の腕をサツキが掴んでとめようとした。

「あなたの木でもないでしょ?!」
「植物の守護魔として、むやみに木を傷つけるのはわたしが許さないから!」

「そうだよ~、やめなよ~!」
そう言ってるが一向に体を張って止めようとせず口だけの杏色の猫耳にオレンジ色のショートヘアの少年が言う。

「葉っぱ食ってる虫とか、穴掘って住んでる鳥とか、いっぱいいるんですけど」
「あたしを許さねーんでしたら、そいつらも許さねーんです?」
蟻やら飛んでいる鳥たちに指をさしながらサツキを睨みつける。

「そ、それは・・・生きるために必要ならある程度は仕方ないけど、あなたは木を食べないでしょ?」

「あたしはこの木で、『家』を作ろーとしてるんです」
「鳥と同じで、生きるためですけどそれでもダメなんです?」

「どうしても木が必要だとしても、そんなに乱暴に叩き折ろうだなんて、感謝のこころが足りないわ!」

「感謝っつったって、植物には目には耳もねーですし」
「植物は、土とか水とか太陽とかにごめんなさい、ありがとう、感謝してます、とか一々言ってるんです?」

「そ、それは・・・その・・・」
サツキも流石に反論出来なくなってきた。

「そうだよ~、ちゃんと感謝した方がいいよ!」
フォローをする怯えた少年。

「さっきから、ピーピーやかましーんですよ!!」
すごい勢いで脅す乱暴な少女の叫び声で怯えた少年は尻込みしてしまう。

「な、なんだよう・・・・」

「なにやら楽しそうじゃの」
「私もまぜて欲しいのじゃ!」

「わうわう!ぼくもまぜて欲しいです!」
先ほどの叫び声でダークフェザー、ローキー、バウ、シャボタン、アミス先生が気づいてやって来た。


「あれ?あの子って・・・・・・?」
ダークフェザーとシャボタンは何かに気づいた。

「ぷるぷるっ!」

「サツキさんのお友達なの?」
シャボタンは乱暴な少女を見つめる。

「違うわっ!こんな、木を痛めつける乱暴ものなんか!」

「別にこの木じゃなきゃダメってわけじゃねーですし、別のとこ行きますから」
「・・・あたしは、あんたらみたいに群れるのは好きじゃねーんです」
「一人でも生きていけるんですから!」

「一人で生きていく・・・?ねぇ、あなたお父さんとお母さんは?」
アミス先生は乱暴な少女に質問をした。

「・・・っ!」
「あんたにはカンケーねーですから!」
それが感に触れたのかアミス先生に向かって怒鳴る乱暴な少女。

「あ・・・気を悪くしたなら、ごめんなさい」

「のうお主、何か事情があるなら聞かせてはくれぬか?」
「もしかしたら力になれるかも知れぬからの」
「特にこの方はどんな難題もたちどころに・・・」
私を紹介しようとするローキーに乱暴な少女は・・・。

「よけーなお世話ですから!あたしの気持ちが、ババ臭いあんたなんかにわかるはずねーんですよっ!」
今度はローキーに怒鳴りつける。

何かがプチッと切れる音がした。
乱暴な少女はローキーに「あぁん?」と睨む。
顔は笑顔のままのローキーだったが乱暴な少女に近づき・・・

ボコッメキッと嫌な音を立てた。
思わず皆は目を閉じた。
「・・・・」
「・・・」
「・・」

「・・・みんな、もう目を開けていいわよ」
アミス先生は止めることも出来ずに冷や汗をしながら皆に目を開けるように言う。
何が起きたのかわからないが乱暴な少女は、ばったりと倒れていた。
そばに立っていたローキーは、笑顔のまま立ち尽くす。

5月A


「・・・すみません、ごめんなさい」
「もう二度と、ババ臭いとか言いません」
「ごめんなさい、すみません」
乱暴な少女はそれを2度、3度呟いて起き上がり怯えながら土下座していた。

「うむ、わかればよいのじゃ♪」
「物分りの良い子は好きなのじゃ♪」
やはり笑顔のままローキーは乱暴な少女の頭を撫でているが撫でている手はかなりの握力だったのか
乱暴な少女の頭がメキメキなってる・・・。

かなり痛そうだった。

「・・・ローキーに『ババ臭い』は禁句ね・・・」
アミス先生は呆然として呟いた。







「さあ、みんなお腹すいたでしょ?」
「お弁当にしましょう!」
「良かったら、あなたたちもどうぞ」
「たくさん作ってきたから!」
気を取り直してお弁当を取り出すアミス先生は怯えていた少年に乱暴な少女も一緒に食べるように誘った。

「ありがとう、おねえちゃん!ボク、おなかぺこぺこだったんだ~!」

「あ、あたしは別に・・・・(ぐぅ~~~)」
「・・・まぁ、せっかくなんでいただきますけど」
お腹が鳴いていた乱暴な少女は渋々食べ始めた。

(ぱく・・)
(ぱくぱくぱく!)
バウに負けないぐらい勢いよく食べる乱暴な少女。

「・・・その様子では、ずっと何も食べていなかったようじゃな?」

(ごっくん)
「家出してから今まで、ほとんど何も・・・」

「ふ~ん?」
「一人でも生きていけるなんて言ったくせに、なっさけないわねー!」
サツキはせせら笑いながら言う。

(ぷいっ)
乱暴な少女は頬を赤くしながらサツキを見ないようにしながら食べる。

「ほれ、私の分もわけてあげるのじゃ」
そう言ってローキーは自分の弁当の中身やオニギリを乱暴な少女に渡した。

「・・・すみません、いただきます」
ローキー相手には素直になったようだ。

お弁当を食べ終えアミス先生が乱暴な少女にどうして家出をしたかを聞き出す。
「もし良かったら、家出のわけを教えてくれない?」
「えぇと・・・」

「あたしのことは『家出娘』とか、好きなように呼んでくれればいいです」

「『家出娘』?可愛くない名前じゃの。ふむ・・・」

「・・・母ちゃんが、あーしろ、こーしろ、あれはダメこれはダメって」
「いつまでもあたしを子供扱いするんで・・・」
「・・・それで、ケンカして、飛び出したんです」
「母ちゃんなんかいなくたって、自分のことくらい自分で決められるってんですよ!」
地面をドンッと叩き怒りを露にする。

「そんなことで、家族と別れるなんて絶対ダメだよ!」
怯えた少年は、いきなり叫びだす。

「絶対ダメ?うちの家族のことに口出しして欲しくないんですけど!」
その反応に少年を睨む。

「ボ・・・ボクは、なりたくないのにいきなり家族と離れ離れになっちゃたんだよ!」
「それで、家族を探して旅してて・・・」
「きみが木をいじめてて・・・」
「家族が一緒にいられるだけでも幸せなことなにに、きみはゼータクだよっ!」

「一緒にいられるだけで・・・」
「・・・」
「・・・ヘタレのくせに言うじゃねーですか」
流石に言い返すことも出来ずにいた。
むしろ関心したくらいだった。

「あなたヘタレっていう名前なの?」
ダークフェザーは変な名前~って付けたしながら怯えた少年を見ていた。

「違うよ!ボクは、あん・・・」
「あ、えぇと(ホントの名前は言わない方が・・・)」
「ボクの名前は・・・」
少し口ごもる少年。

「自分の名前がわからないの?」
「そんなの、おかしいわ」
「あなた、バカなの?」

「バカじゃないやい!えぇと、名前は・・・!」
それでも何か考えながら言おうとするが・・・いえなかった。

「・・・母ちゃんたちと一緒に食べたご飯、おいしかったな・・・」
「時々、兄弟で取り合いになったりしたけど、楽しかった」
「・・・母ちゃんに会いたい」
「仲直り、したいな・・・」
そんな時、家出少女がボソッと呟いた。

「そうねぇ・・・」
「じゃあ、お母さんにカーネーションをプレゼントしたらどうかしら?」
「ちょうど、母の日の季節だし」

「カーネーション?」
アミス先生の提案に耳を傾ける家出少女。

「母の日のプレゼントよ、常識でしょ?」
サツキはフツーと言う。

「おくりものをするです!こころが伝わるです!」

「・・・母の日のプレゼント」
「そんなのがあるんですか」

「え?あなた、本当に知らないの?どこに住んでいたのよ?」

「・・・ま、遠いところですよ」
「カーネーションってやつも住んでねーようなとこです」

「えっ?カーネーションはお花なんだよ?」
シャボタンはカーネーションの説明をする。

「花・・・ですか」
「母ちゃん、そういうの喜ばねーんじゃねーですかねぇ・・・」

「きっと、喜ぶと思うわお母さんもあなたと仲直りしたいって思ってるはずだもの」

「そう・・・ですかね?・・・そうだといいな・・・」
少し微妙そうな顔をする家出少女だったがプレゼントしてみようかと決心がつく。

「でも、この辺だとあんまり見かけないのよね」
「カーネーション」

「・・・そうだわ!『花の種』いっぱい集めれば、1つくらいカーネーションの種があるはず!」
サツキはいきなり思いつき叫びだす。

「でも、今から種をまいて育てるのはすごく時間がかかるんじゃないかなぁ?」

「大丈夫よ、シャボタン」
「今の季節なら、あいつの力を借りられるから」

「あいつって?」

「西アクロニア平原の、ファームの妖精ところにいる『妖精王』よ」

「あいつの力があれば、種をまいてすぐに花を咲かせられるわ!」

「うわぁ、すご~い!」

「ねぇ、母の日の季節だから、みんながお母さんにカーネーションを贈ってるんだよね?」
「街の人に聞けば、どこで手にはいるのかわかるんじゃないの?」
少年は街の人たちに聞くように促す。

「・・・あ」
「あなた、ヘタレのくせにいいとこに気がつくじゃないの!」

「だから、ボクの名前は・・・!」

「名前は?(じぃ~っ)」
皆が見つめる。

「えぇと・・・ホントの名前は・・・(ええと、別の名前・・・急に思いつかないよう!)」

「ヘ・・・・・・ヘタレー、だよ!」

「ふむ?家出娘は、名前を知っておったのか?」
ローキーは冷静に言う。

「いや、さっき初めて会ったばかりですけど」
「・・・自分でも、驚いてます」

「お主は、人の本質を見抜く素晴らしい目を持っておるのじゃな!」
結局、少年は自分でヘタレと名乗ってしまったことに落ち込んでいた。

「ボ、ボクの名前のことはいいから、早く街の人にカーネーションの話を聞きに行こうよ!」

「それじゃ皆でカーネーションを手に入れましょう!」

「おー!!」

サツキの言う『妖精王』に会いに行くか。
もしくはヘタレーの言う街の人にどこで手にはいるかを聞きだすか。
そのどちらかの方法となった。

さて・・・どちらを選ぶか。



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アルマたちと絆の樹 第4章~ 

アルマたちと絆の樹(小説)

第4章 新しい仲間

4月B



新しい季節「春」へと入り蕾だった桜が咲き誇り満開へとなっていた。
気候も寒くなくなり、暖かい日差しに私たちは陽気な春日和を満喫していていた。

「私たち」というのは、不思議な猫姉妹に守護魔、そして、モンスターが擬人化したアルマたちのことである。
ここアミス先生の学校は、冒険や探検といった知識を教えるのではなく一般教養といった普通の授業を行う学校だ。

始まって4ヶ月、生徒数は私を含め10人になっていた。
そこに新しく生徒がまた一人増えることになった。
鼻歌を歌いながら陽気に金槌を釘に打ち付ける音がアミス先生の飛空庭から響きわたる。
紅屋板を下から上へ下から上へと運び、またトンテンカンっと響く。

私が飛空庭へと昇ると飛空庭の奥に小さな校舎が立派に建っていた。

「レーヴェリスちゃん!見て!」
「こんなに立派な校舎が出来たのよ!」
「本当に、ウヅキちゃんにはなんてお礼を言ったらいいか・・・!」
アミス先生が喜びのあまり校舎を建ててくれた彼女の手を握る。

「ううん、あたしは何も!」
「昔、初心者学校にいたことがあったから、そっち方面にツテがあただけだよ!」
「みんなが喜んでくれて、あたしも嬉しいなっ!」
黒い髪のポニーテールが焔のように紅く染まり、黒いセーラー服、白の上履きといった学生スタイルの彼女は少し照れくさそうに言う。
彼女の名前は『守護魔・ウヅキ』4月を守る守護魔である。

「先生、ただいま~っ!」
そう言い、3人組の少女が帰ってきた。
幼い少女のように見えるが彼女たちこそがモンスターが擬人化した姿だ。
ダークフェザー、バウ、シャボタンの3人である。

「おかえりなさい、探してた子は、見つかった?」

「ううん、見失っちゃったわ。・・・私たちと同じ子だと思ったんだけど」

「においがどこかへ行っちゃたです」
「もうこの街にはいないかもしれないです・・・」

「もしかして、絆の樹の声が聞こえない子なのかな・・・?」
どうやら3人は他にいるアルマを探しに街を練り歩いていたようだ。

「さあ、そろそろ次の授業の時間よ」
「みんな、教室に入ってね」
アミス先生は手をパンパンと叩いて出来立ての学校の中へと入っていく。

「お嬢、わんこ、しゃぼりん!」
「しっかり勉強するんだよっ!」

「おじょう? わんこ? しゃぼりん?」
3人はそれぞれ呼ばれた名前を口にする。

「おー、一気に言っちゃたのに皆自分の『名前』がちゃ~んとわかったんだね!」

「なんで私が『おじょう』なの?」
「私の名前は『ダークフェザー』よ」
「バウが『わんこ』でシャボタンが『しゃぼりん』なのはなんとなくわかるけど・・・」

「名前はね、その子の本質をそのままズバッと言い当てる、大切なおくりものなんだよ!」

「気品があって、きれいで、教養がある女の人のことを『お嬢様』っていうから、きっとそれだよ、ダークフェザーちゃん!」

「しゃぼりん、正解!」
ウヅキはビシッとシャボタンを指差す。

「えへへ・・・!」

「私、がんばって勉強するわ お嬢様だもの」

「ぼくもがんばるです!『きょうよう』を見つけるです!」

「みんなで勉強して、立派な人になろうね」
そう言って3人は教室へと入っていった。

「さて、っと・・・」
ウヅキは少し黙って改まって私に言い出した。

「あの子たちの前ではいえなかったんだけど、お願いしたいことがあるの」
「あの子たちが探していた子・・・つまり、『人の姿になれるモンスター』もしかしたら、危険な存在かもしれない」

危険な存在、その言葉を聞くのは初めてではない。
最初のアルマ、ダークフェザーを見つける前に1月の守護魔ムツキも同じことを言っていた。
だが、彼女はダークフェザーを危険な存在ではないことを理解してアミス先生に頼み教養を身につけることにしたのだった。

だが、ウヅキにとってはまた別の脅威を持っているっと考えていた。
それは・・・

「あたしの『力』に響いてくるの」
「人間に対する激しい怒りと苦痛・・・、この街でこんなもの感じたことなくて、さっきから、震えが止まらないの・・・」
「人間に対して、こんな強い憎悪を人間が持てるはず無いわ!」
「人じゃない誰かが、人に対して敵意を向けてるのっ!」
「その子は今、東アクロニア平原・・・たぶん初心者学校の近くにいるわ」
「お願い!あたしに力を貸してっ、レーヴェリス!」
人への憎しみを持つ、アルマ・・・
それは存在するのだろうか?
私は気になりウヅキの依頼を受けることにした。






東アクロニア平原。
豊穣の領土を持つファーイーストは主に農産業、家畜といったものを商人が輸出するために通る街道だ。
四方の中で最も人が通るこの街道にそのアルマはいるのだろうか・・・?
ウヅキは初心者学校の傍で突如、膝をつき唸りだす。

「こっ・・・この感覚・・・!」
「なんて激しい感覚なの!?」
「肌がビリビリするみたい・・・!すごく近い・・・!」
「・・・あっ!あの子・・・!」
「あの子だよ!・・・あれっ・・・?」
「苦しくて、辛くて・・・これは・・・これは、あの子の・・・?」
平原の道を南へと走っていく一匹の狼。
あれは、ローキーと呼ばれているモンスターだ。
普段は海岸の洞窟に生息するはずで、このような人通りが多い場所にくるのは珍しかった。

私とウヅキはその狼を追った。


4月C



少し学校から離れた場所で、そのローキーはぐったりと横に倒れていた。
なぜ倒れたのかひと目でわかった。
ローキーの体からポタポタと赤い液体『血』を垂らしていたからだ。

私は一刻も早く手当てをしようと近づくが、ローキーは明らかに警戒して私を見て唸っていた。
触ると噛み付く、そんな顔だった。
その時、横から一人の優雅な着物を着た碧い猫耳の少女が近寄りローキーの手当てをしようとした。
ウヅキは「危ない!」っと叫ぶも着物を着た少女は手を差し出す。

ガブッ!案の定、差し伸べた少女の手をローキーは噛み付いたのだった。

手から血がにじんでいてポタポタと下へ血が落ちていく。
それでも彼女は少し苦痛の顔をしながらもローキーの傷口に布を当てて出血を抑えていた。

「あ・・・私のことはどうぞご心配なく私よりも、こちらのお方を・・・」
優雅な着物を着た少女はそれでもローキーの心配をしていた。

「アォォォ~~~~ン・・・!!」
ローキーは、助けを求めるように甲高い遠吠えを上げている。
急がないとローキーの命も関わるし仲間も呼ばれて狼の群れがここへと集まってしまう。
少々危険だが私も近づいた。
私がローキーの注意をそらして着物を着た少女にローキーの応急処置を任せるようにした。

「ガルルッッ!」
ローキーの牙が食い込み、激しい痛みが走る。

「ご無理はなさらないで! このままでは、あなたが・・・!」
だが、それでも私はローキーを殴ったり振りほどいたりしなかった。
私はそっと、ローキーの頭を撫でて警戒を解いてあげようとした。

少しづつだがローキーの体から力が抜け噛み付かれた手を抜くことができたがかなり深く牙が食い込んだようだ。
血が止まらなかった。
ローキーは全身から怒りが消え、深く澄んだ瞳で見つめてくる。

「・・・くぅ~ん・・・」
そう鳴いてローキーが私の手の傷を舐めてくれた。

「助けようとなさっていたことが、ローキーさんにも伝わってたようですね」
「まるで謝っているみたい・・・」
着物を着た少女は、ほっと安心した。

「レーヴェリス大丈夫か!?」
ウヅキがいないっと思ったら先ほどの初心者学校から救急箱を取りに戻っていたらしい。

「早く手当てをしないと、その子の命が・・・・・・痛っ!」
着物を着た少女も血で染まった手を抑えた。

数分後・・・
ようやく私、着物を着た少女にローキーの手当てを無事終えた。
ローキーは、ケガのせいかぐったりとしていて元気がない。

「それにしても、変わった毛色のローキーだね」
「毛並みも整っててとっても綺麗・・・、この辺では見たことないよ」
ウヅキはジロジロとローキーを見つめる。

「・・・・」
「ケガの手当ては出来たけど、このお方、ひどく弱っています・・・」
着物を着た少女は包帯の手を抑えて心配してローキーを見つめていた。

「大丈夫? ええと・・・」

「あさぎ・・・私は浅葱と申します」
「どうぞ良しなに・・・私の方は大事にございません」
「このお方、とっても怖い思いをしたみたいです。私にもおびえていました」
「・・・体だけじゃなくて、心も、深く傷ついている・・・」
このままではローキーの容態は悪化するのかもしれない。
だが、モンスターの傷を癒す方法はあるのだろうか?

「私、とてもよく効くお薬を作れる御方を存じております」
「その薬が、もしかしたら この方に効くかも知れません」
「・・・少々気難しい 御方ではあるのですが、お薬を分けていただいてきます」
そう言って平原のさらに東へと歩いていった。

ウヅキはワナワナと怒りを露にしていた。
「この子にひどいことをした悪いやつがいるんだね」
「この子の心を救うために、ひどい目にあう子をこれ以上増やさないため」
「そいつをこらしめなきゃ!」
彼女もそう言い残しどこかへ行ってしまった。

私は眠っているローキーの介護をしながら待つことにした。

浅葱とウヅキ彼女達は今頃何をしているのだろうか・・・。




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アルマたちと絆の樹 第3章~ 

アルマたちと絆の樹(小説)

第3章 大事な気持ち

3月A




もうじき春がやってくる。
そんな思いが伝わってくる暖かさになってきた3月。
この3月になると彼女たち守護魔は次の守護魔へと交代をするため
私とキサラギは3月の守護魔であるヤヨイに会いに行こうとしていた。

ヤヨイは守護魔の中でも随一の武術の達人である。
そのためか他の守護魔たちと会わずに山へ修行へ、谷へ修行へ
各地を転々としながら修行をしていたため滅多に会うことはなかったのだが、3月の守護魔としての責務を果たすため一時的にここアクロポリスシティへと戻ってくるのだった。


ヤヨイの家は竹林に囲まれた古道家である。
離れには小さな東屋があり、そこにヤヨイは正座をしながら瞑想をしていた。
ピンッと背筋を伸ばし周りの鳥の音、風の音すらも聴こえない。
そういう顔をしながら静かに気を集中していた。

守護魔はヒトの姿形をしているのではなく
空中に浮く、いわば背後霊のような小さな生き物だ。

最初どう声をかければいいか戸惑ったが意外にも早く壊された。
迷いなくキサラギは背後から久しぶりに会ったヤヨイに抱きつき
慌てたヤヨイは何が起きたのか、キサラギが誰なのかわからなかった。

やっと冷静を取り戻したヤヨイにアルマのこととアミス先生のことも説明した。

しばらくヤヨイは考え黙ってしまった。
数分経ち「しばらく待っていてください」と言うと家の中に入って行ってしまった。

さらにしばらく経ち家から出て来たのはヤヨイではなく人間だった。
古風でいて色鮮やかなアジアントップスに黒のボトム、黒いズックそして、手に持っているのが愛用の三節棍。

彼女がヤヨイとわかったのは、むしろそこではなく。
むしろヤヨイのチャームポイントである長い三つ編みに細い楕円形のメガネでわかった。

どうやら彼女もヒトの姿に変えられるみたいだ。

「フシギな卵が持っていた『願いを具現化する力』を使いこなせるようになったのです」
「街中で活動するためには、この姿の方が何かと都合がよいのですが・・・まだ少し この体には違和感がありますね」
「それはともかく、わたしもアミス先生の生徒にしていただくことにしました」
「学問を修め文武両断を極めたいという個人的な欲求もあるのですが・・・」
「人の心を持つモンスター・・・アルマたちのことを守りたいのです」
「人と同じ心を持つ彼女たちが人の社会で生きていけるよう正しく導いてあげたいのですが・・・」
「よろしければアミス先生の学校まで案内をお願いしてもいいでしょうか?」

もちろん私とキサラギは了承して、アミス先生の学校へと向かった。


街へと入るとヤヨイは立ち止まり周りの繁華街へと目を向けていた。
「勉学に励む皆さんに差し入れをしたいのです」
「なので、学校へ行く前に少しだけ買い物に付き合っていただけませんか?」

そう言われ学校へと行く前に買い物へといくことになった。

2月にバウを追いかけるために走り回ってた、あのアップタウンの南側である商業区へと来た。
この商業区で売られるものは衣類だけではなく、飯店や雑貨屋、武具に古美術品などが露店を出し
多くの人で賑わいを見せていた。

っと、ここで気づいたが、いつの間にかキサラギがいなくなっていた。
ヤヨイに訊くと先に学校へと行ってしまったらしい。
どうしたのだろうか?

多くの露店を素通りしてヤヨイが立ち止まった店は精肉店「筋肉王」という文字が看板に書かれていた。
何とも近寄りがたい店名の中へと入っていくヤヨイ。
ちょっとちょっと大丈夫なのか、この店・・・
そう思いながら私も入っていく。

中にはビーフ、ポーク、サーロインにチキンがずらりと並ぶ。
店の奥から声がしてくる・・・。
ヤヨイは「ミカさーん!」と声をあげて店主を呼んでいた。
よかった、どうやら名前からして女性のようだ・・・。

奥から「はぁ~い!」と言いながらこちらへやってくる声が・・・

ぎゃあああああああああ(私の心の叫び)

ズシンズシンと足音をたてながら現れたのは2メートル半ぐらいある大きな男だった。
ミカルド(ハートマーク)のエプロンをつけた男だ。
それだけで驚くのは、まだ早いほうだった。

女性の名前に声だったはず!
なのに何故、男が・・・
「うふふっ、あぁらま!ヤヨイちゃんじゃない!お・ひ・さ・し・ぶ・り(ウィンク)」

「はい。ミカさんもお元気そうで何よりです」

どうやら名前は「ミカルド」のようだ。
女のような名前で声で・・・紛らわしいわ!
しかも、どうやらこの人は属的にいうと「オネエ」らしい・・・

私は吐き気がしてきたので外で待っていた。
そんな気も知らずヤヨイはミカルドさん(通称「ミカさん」)と話を続けていた。

数十分後・・・


「お待たせしましたレーヴェリスさん」

「あぁうん。そうか」
軽く頷き1分でも早くここを離れたかった私はヤヨイを引っ張り足早に商業区を出た。

「ミカさんとは廃炭鉱で修行のときに出会いまして、その時に『最強の魔獣』を素手で一撃で倒したんですよ!」

最強の魔獣というのは廃炭鉱に潜む熊たちのボスのことである。
その名のとおり魔獣の中では、最強を意味する大熊だ。
それを一撃で倒すのであれば、ヤヨイと互角か、それ以上か・・・

それからもヤヨイが語るミカさんの武勇伝は続く。

「そもそもミカさんは・・・」
「今までミカさんに挑戦した数しれず・・・」

長くなるので以下略としまして。
そんな話をしながら、ようやくアミス先生の学校へと着いたのだった。

「あんたね!そんなことじゃ・・・・」

「えっと・・・その・・・でも・・・(おろおろ)」
学校の傍で言い合う2人の少女がいた。
姉妹ケンカだろうか?
ヤヨイは気づかずに学校がある飛空庭へとロープを伝って上がっていった。
私が割って入るのも余計なお世話だと思い学校へと入った。






3月B


「皆さん!」
「差し入れ・・・を・・・」
景気よく笑顔で大声で入ってきたヤヨイが思わず声を止めてしまった。
それはどうしてかっというと・・・


「あなた、バカなの?」

「わ、わぅわぅ~!」

「人間のときはふたつの足で歩かないとだめなのよ?」
「こんな風に、踏まれちゃうんだから!」
「わかった?」

「ダークフェザーちゃん くすぐったいです!」

「もしも、おとなに踏まれたら、とっても痛いのよ?」
「そうよね、ウィリー・ドゥ?」

この学校に新しく生徒して入った2人のアルマ。
ダークフェザーとバウ。
どうやらバウが四つん這いで(犬のように)歩いていたのか、それを見ていたダークフェザーはバウを足で踏んで諭していた。
怒りや悲しみなどっといった感情はない、むしろ両者とも少し嬉しそうに言う。
バウは少し気持ちよさそうだった。

「ごめんなさい!」
「ぼくわかりました!」
「ぼくはばかなバウでした!」

少し笑い涙を出しながらバウはあやまる。

「・・・ふぅ、もうしないのよ?」

「わぅわぅ~・・・」
「でもグリグリは楽しかったです」
「これもひとつの『あい』のかたちです?」

「ふふっ、そうねぇ」
「する方が愛をこめてて、される方も愛を感じたなら、それはきっと愛なのよ」
「どっちかの一方通行じゃダメだけど、ね?」
そばにいたのは先ほどいなくなったキサラギだった。

「守護魔キサラギ・・・君は一体 何を教えてるんですか」
ヤヨイはあきれた顔で見ていた。

「『愛のかたちについて』に決まってるでしょ?人の話を聞いてなかったの?」
何を当たり前なっ的に言うキサラギ。

「バウさんがしゃがんだときに人にぶつかりそうになって」
「それをダークフェザーさんが心配していたのですよ」
1月の守護魔・ムツキも出てきた。

「自分はバウの先輩だからとはりきっているのだな」
 
「ダークフェザーちゃんはバウちゃんのことが大好きなんだよね」
シャノワールにみるく。
この2人は離れ離れになってしまった姉妹を探すため、この学校の生徒となって
姉妹たちを日夜、探し続けていた。


「そういうわけじゃ・・・むー・・・」
ダークフェザーは頬を膨らましながらも少し顔を赤くしていた。


「ダークフェザーちゃんはやさしいって、ぼくしってます!ん・・・」
「・・・くんくん、ヤヨイさんからいい匂いがするです・・・?」
バウがヤヨイの持ってる紙袋の匂いを嗅いでいた。


「あ・・はい。学業に勤しむ皆さんに手作り肉まんの差し入れです」
「さあ、あたたかいうちに召し上がって下さい!」
紙袋から取り出したのは湯気がたつほかほかの肉まん。
ヤヨイは1個1個手渡しで一人づつ渡していく。
「あつあつですから、やけどしないよう気をつけて召し上がってください」

肉屋のミカさんから買ったのか作ってもらったのかわからないが
その時に肉まんを手に入れたのは確かだ。
だとすると、これはミカさんの手作りか・・・。


「ありがとう」
「さあ、お茶も入ったわ」
「みんなでいただきましょう」
アミス先生も1人1人にお茶を持っていき渡す。

「はい、お茶もどうぞ、みんなの分もあるわね?」

「それでは、いただきます!」

「わぅわぅ!おいしいです!(ばくばくばく)」

「バウさん!ちゃんと両手で持って、よくかんで食べてください!」

「・・・うん、おいしい。ヤヨイもう1つ頂戴」
「ウィリー・ドゥも食べたいって言ってるの」

「あ・・・すみません」
「ウィリー・ドゥさんの分は用意していなくて・・・」

ちょっと残念そうな顔をするダークフェザー。

「あ、そうでしたアミス先生。実はわたしもアミス先生の生徒にしていただきたく・・・」

「そうだったのね。ええ、もちろん歓迎よ。ヤヨイちゃんね」
「よろしくね」
みんなも肉まんを食べながら「よろしく」と言い
ヤヨイも応えた。
その時に気づいてしまったヤヨイ。

「あれ?ムツキさんとキサラギさんは召し上がらないのですか?」

「申し訳ありません、おつとめの都合で肉が食べられないのです・・・」
たしかに巫女や僧侶は動物の命を奪って得た『肉』を食べないらしい。
でも、キサラギは・・・?

「私もパス。食べた分のお肉がお腹についちゃそうだもの」
「さっきも、ついついお腹が空いて・・・な、なんでもない!」
なるほど、先ほど商業区から逃げるようにいなくなったのは食べ物に目移りしそうになったからか。


「・・・。次は2人に食べてもらえるもの作ります」
「次こそは・・・っ!」
ヤヨイは拳をグッと握り締め「この屈辱忘れるべからず」のような感じで宣誓した。
次はギョーザか、それとも炒飯かな・・・


「あつっ、あつっ!・・・」
「あっ(ぽろっ)」
「あああああ!!落としちゃった・・・!」
みるくが落とした肉まんは無残にも教室に落ちてしまった。

アミス先生は「残念だけど捨てるしかないわね・・・」と言って捨ててしまった。

「ほら、私のを半分あげよう」
「ふぅ、ふぅ・・・熱いから気をつけて」

「わぁ・・・ありがとう、おねえさん!」
シャノワールはみるくに肉まんを半分に千切ってみるくに渡した。

「・・・半分こすればいいのね」
「ほら、ウィリー・ドゥ。おいしい?(ぐりぐり)」
それを見ていたダークフェザーはウィリー・ドゥに自分の肉まんの半分を口に無理やり入れようとした。
可愛そうに・・・そのせいかウィリー・ドゥの口のまわりは汚れていく・・・

「ウィリー・ドゥのお口がべたべたになっちゃたわ!」
「むー!」
ウィリー・ドゥの口の周りを自分の服で拭き取り綺麗にするダークフェザー。


「肉まん、とってもおいしかったです」
「ぼく、おなかいっぱいです!」

「ああっ、もしかして私の分まで・・・」
どうやらヤヨイの分だけではなく紙袋に入っていた肉まんをバウが全部食べてしまったようだ。


「ちょっとお邪魔するわ!」
甲高い声が教室内に響く。

その声にびっくりする生徒達とアミス先生。
その声の主は先ほど学校の傍にいた言い争う2人の姉妹の1人だった。






ピンク色のツインテールに茜色の瞳に可愛らしいピンクのスモックを着ている少女。
ずかずかと教室へと入り叫び声で
「あたしは『アカリ』!」
「あやしいものじゃないわ!」
「この飛空庭に・・・」
と言い私たちをジロジロと見る。

「・・・って、ええっ!?」
いきなり驚くアカリと名乗る少女。
いや、びっくりしたのはこっちだから。


「あか・・・り?」
「アカリか!」
「お前のシャノワールお姉さんだ、我が妹よ!」

「えっと、えっと、みるくだよ」
「あかね・・・じゃなくて、アカリねえさん!」
感動の姉妹再会というやつか~。

「シャノワール、みるく姉さん!」

ん・・・?

「逆だ、あか・・り!」
「私がシャノワールで、こっちがく・・・みるくだ」
まるで初対面のように、そして焦るシャノワール。

「そうそう、そうだったわね!」
訂正するアカリ。

「アカリちゃんは、シャノワールちゃんたちの姉妹なのね?」
「つもる話もあるでしょうし、お茶もいれてあげるわね」
アミス先生は再びお茶を入れるため給水室へと向かった。

「他のみんなは!?」

「いや・・・まだ私たちだけだ」

「そっか・・・でも、会えて良かった!」
「こんなとこで2人に会えるなんて!」

だが、それよりも不思議な会話をする2人。
そう、まるで・・・

「アカリさんはご家族がここにいるのをご存知なかったのですか?」
「なぜここにいらしたのです?」
ヤヨイは冷静にシャノワールとアカリを見る。
そうなのだ、知っていると分かっててここへ来たのかと思ったが・・・

「あっ忘れてた!シャボタン!」
「おいで!」

「えっと・・・おじゃまします」
「みなさん、はじめまして。シャボタンです」
先ほどアカリと言い争っていたもう1人のほうの少女。

緑色のサイドテールのロングヘア。
花の模様をしたワンピースに肩掛けカバンを背負っている。
そして、どこか普通の子供とは言えない雰囲気を持つ幼い少女だ。

「この子はあたしの弟子のシャボタンよ!」
「よくわからないけど、この子がこの飛空庭に上がりたそうだったから連れてきたの」
姉妹かと思っていたが、どうやら師弟関係だったようだ。

「それで、シャボタン。ここに何があるの?」

「あの・・・わたしは、よばれたの」

「・・・ってことらしいわ」
「シャボタンを呼んだのはだれ?」
再びジロジロと私たちを見るアカリ。
むしろ、初対面だ、といわんばかりに私たちはシャボタンを見ていた。


「私たちはただ、ここで食事をしていたのですが・・・」
ヤヨイは少し間を待って喋りだす。

「あ、シャボタン、お腹が空いていたのね」
「だったら、最初からそう言えばいいのに!」
いやいや、さっき『呼ばれた』と言ったのは・・・?

「えっと・・・でも・・・」
おろおろとしながらアカリを見ているシャボタン。

「!バウ食べている場合じゃないわ!」
「この子、わたしたちと同じ・・・!」

「わぅわぅ!」
ダークフェザーとバウは何かに気づいたようだ。
っとするとここで思い浮かぶのは『アルマ』という単語だけだ。

「あ・・・!わたしとは違うけど、同じ!」
「わたしだけじゃなかったんだ!」
そういうとシャボタンの体が光だし南ウテナ開拓村で見るサボテンのモンスターになった。

やはりシャボタンもアルマだった。
しかしシャボタンもここに同じ仲間がいることは知らなかったようだ。
っとするとシャボタンを呼んだ人物は一体・・・?


「・・・♪」

「バゥ!ワゥ!」
ダークフェザーとバウも同じように本当の姿になりシャボタンに見せる。

「しゃ、シャボタンがモンスターに!?」
「どうなってるのこれ!?」
アカリは驚愕する。
っというよりも師弟なのに知らなかったようだ。

「落ち着け!知らなかったのか、アカリ?」

「だ、だって、さっき弟子にしたばっかで・・・!」
シャノワールはアカリの肩を抑えて落ち着かせるように言う。

「確かに彼女達はモンスターですが人と同じ心を持っています!」

「でも、アミス先生にはひみつなの!」
ムツキとみるくも急いで付け加えてアカリに説明をする。

それを見たアカリは何か訳ありだとわかり、落ち着いた。


「はい、お茶が上がったわよ」
「・・・あら?あなたはだぁれ?」
そこへちょうど、アミス先生が戻ってきた。
慌ててヒトの姿になるアルマの3人。

「あの・・・わたし、シャボタン、っていいます」

「アミス先生、シャボタンも生徒にしてあげてください」
ヤヨイは突如、提案を出す。

「ちょっと、勝手にあたしの弟子を!」
アカリはそれを止めようとする。

「アカリ、あとで説明する」
シャノワールはアカリにヒソヒソと話はじめた。

「わ、わかったわ」
アカリも応えてヒソヒソという。

「私は大歓迎よ!よろしくね、シャボタンちゃん」

「えっ、あ、あの・・・はい」
「頭に、あの・・・」
シャボタンが一番気になったのはアミス先生の頭にのっているプルルこと『ぷるぷる』だった。

「ぷるぷるっ」

「あ、この子は『ぷるぷる』」
「私の友達なの」

「ぷるっ!」
今日もクネクネと動くぷるぷる。
いや、何かモソモソと動いている?

すると・・・ぷるぷるは、きらきら光る小さな石のようなものを差し出した。






「あ、それは!空に浮いてた・・・!」

「いい匂いの、そらのおくりものです!」
ダークフェザーは石を指差し、バウは匂いを嗅ぐ。

「・・・・!それ・・・!その『種』・・・!」
シャボタンも驚いて石(種)に指さす。

「あなたもこれに呼ばれてきたのね?」

「そらのおくりものは『たね』です?」

「わたしは、その『種』が欲しいの」
「種をわたしにください」
ダークフェザーとバウに懇願するシャボタン。

「これは、私とウィリー・ドゥが最初に見つけたの」
「あなたには、あげないわ!」
反論するダークフェザー。

「ダークフェザーちゃん、そらのおくりもののたねは、ぼくのおはなが見つけたです!」
今度はダークフェザーとバウが取り合いになる。

「あの・・・(おろおろ)」
オロオロとするシャボタン。

「みんな、ちょっと落ち着いて」
「仲良くしないと、先生困っちゃうな!」
バウとダークフェザーを抑えるアミス先生。

「シャボタン。私はヤヨイといいます」
「君にはこれが『種』だとわかったんですよね?」
「どうしてです?」

「あ、あの・・・わたし、木とか草花の声がわかるんです」
「この種はずっと、『芽を出したい』って言ってて・・・」
「このままだと芽が出せないって困ってて・・・」

「なるほど、春のこの陽気ですからね」
「種が芽吹きたい気持ちもわかります」
「植木鉢や土を用意すれば大丈夫ですか?」

「あっ・・・違うんです!」

「この種は、ちょっと特別な子で芽を出すためには、春の木漏れ日みたいなあったかいお水が必要なんです」

あったかい水?『お湯』のことだろうか?

「ねぇ、だったら『あったかい水』を持ってきた子が種を自分のものにできる、っていうのはどう?」
キサラギは1つの提案を出す。

「えっ・・・(おろおろ)」
シャボタンどうしたのだろうか?すごいびっくりしている。

「キサラギさん、こういうことは競争するのではなく」
「みんなで協力して・・・」
ムツキは協力を進める。

「いや、キサラギの意見も一理ある」
「ダークフェザー、バウ、それなら種が誰のものになっても納得できるだろう?」
シャノワールは賛成のようだ。

「ええ、種が欲しがってるものを手に入れた人が、いちばん種を上手に育てられるはずだもの」

「ぼくがいちばん早く、あったかい水をみつけるです!」

「本人たちに落としどころ見つけさせるっということですね」
「確かに、遺恨の残らないやり方です」
ダークフェザーもバウもヤヨイも賛成のようだ。

「もちろん協力もありよ。みるくちゃんとは私と一緒にバウちゃんを手伝いましょ」
キサラギはみるくを無理やり引っ張りバウの味方につかせようとした。

「・・っえ?!」
「ちょっと何なの あんた?」
「みるくとシャノワール姉さんは、あたしとシャボタンの味方に決まってるでしょ!?」
アカリはみるくを反対側から引っ張る。

っというか、みるくが両腕を2人に引っ張られ痛そうだ・・・

「シャノワール・・・私の味方してくれないの?」
ダークフェザーは悲しそうにシャノワールを見る。

「ん・・・そうだな・・・みるく、お前はどうしたい?」

やっと、みるくを放すアカリとキサラギ。
「みるくは・・・うん、みるくはバウちゃんとキサラギさんをお手伝いする!」
「だって、これは皆で仲良くするためにやるんだよね?」

「わぁーい!みるくちゃん、ありがとう!」
バウは嬉しさのあまり、みるくに抱きつく。

「くる・・・みるく」
「あなた、いつのまに・・・」
少しショックをうけるアカリ。

「みるくはここに来てから日に日にしっかりしてきてる」
「アカリ、姉としては誇らしいだろう?」

「そ、そうね」と言い従わなくなったみるくに少し寂しそうに言うアカリ。

「ムツキ、わたしたちはダークフェザーの手助けをしよう」
「競争を通じてこそ学べることもたくさんあるだろう」

「シャノワールさん・・・わかりました」
「皆様、正々堂々勝負なのです!」
ムツキもようやく同意してくれた。

「ありがとう、シャノワール、ムツキ」
「私、絶対負けないわ」
ダークフェザーは意気込む。

3月C


「ふん、上等じゃない!あたしとシャボタンの師弟コンビの実力見せてあげるわっ!」

「アカリおねーちゃん、わたしは・・・」

シャボタンは何か言いたいことがあるけど、言い出せないようだ。
そして、私を見る。

これは・・・私に何かを訴えている?
しかし一体何を・・・?

「レーヴェリスちゃんとヤヨイちゃんは」
「シャボタンちゃんの味方してあげてね?」
アミス先生はやさしく言う。

「はぁ!?別にあたしたちは2人で!」
アカリは反発する。

「君たち2人はここに来たばかりで不利になってしまいます」
「公平を期すためにも私とレーヴェリスさんが君たちに力を貸しましょう!」
ヤヨイの言うことも一理あるが流石に4人もいらないと思うが・・・

「・・・まぁ、あなたたちがどうしても、っと言うならあたしたちのチームに入れてあげてもいいけど?」
「足手まといにはならないでよねっ!」
アカリはツンッとして言うが悪い子ではないようだ、たぶん。

「あの・・・ありがとうございます!」
アカリの代わりにシャボタンが礼を言っているように感じた。
先ほど訴えるように私を見つめていたのは助けて欲しかったのだろうか?

「さて、『あったかい水』といえば、やはり温泉でしょう」
「ECOタウンにある、ECO温泉にいきましょう」

「どこだか知らないけど、わざわざ遠くまで行かなくたって、温泉の水ならすぐそこで手にはいるわ!」
「アップタウンにいる天戒のおじーちゃんにもらえばいいのよ!」
ヤヨイはECO温泉を、アカリは天戒のおじいさんを、違う意見を出した。


「天戒師が配っている『飲める温泉』のことですか?」
「あの水は確か、冒険者のために成分を調整されていて効能が少々異なると聞いた事があります」
「ECO温泉は決して遠くありませんよ」
「アップタウンのタイニーに頼んで少々走ればたどりつけますし・・・」
「それに、今の季節であれば天駆ける龍を呼んで飛んでいくこともできます!」
「私と同じ気を練ることが出来る守護魔に協力をしてもらうか」
「春の気を蓄えた『花』をいくつか用意する必要がありますが」

「だから、そんな手間ひまかけなくてもいいんだってば!」
「あたしは知ってるのよ」
「天戒おじーちゃんが大事にしている、特別製の『飲める温泉水』のことを!」

「直接、温泉から汲んだ水のほうが、効き目があると思いますよね?」
ヤヨイはシャボタンに聞く。

「シャボタン!遠くまで行ってる間に他のチームに負けたくないでしょ?!」
アカリもシャボタンに聞く、否、師匠命令のように言う。

「あの・・・、わたしは・・・」
再びシャボタンはオロオロしながら私を見る。

ECO温泉へ行くか天戒おじいさんに会いに行くか。
どっちにすればいいか決めて欲しいような目で見ている。

ふぅむ・・・さて、どちらを選ぶか・・・


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アルマたちと絆の樹 第2章~ 

アルマたちと絆の樹(小説)

第2章 真心の贈り物 


2月A






2月14日。
この日が何の日か知っているだろうか?
そう、言わずと知れたバレンタインデーの日だ。
女子が好きな男子に手作りチョコレートを贈ることで愛という想いを伝える、そんな日。

アクロポリスシティでもチョコレートを作ろうと料理に励む女子が増えてきている。
そのことが、ここアミスの学校でも話題は持ちきりであった。

アミスの学校とは、トンカからやってきた教師アミスが児童のための学問や教育指導のために開いた学校である。
学校と言っても教室や校舎自体は存在せず飛空庭の上に黒板、ピアノがあるだけの学校。

生徒の数もまだ少なく私を入れて4人しかいなかった。
その3人とはダークフェザー、シャノワール、ムツキ。
主に女子しかいないが明るく楽しい授業を続けていた。

ダークフェザーは『アルマ』と呼ばれるモンスターの中で特別な存在であり
人の姿に人の言葉、人の感情を持つ。
前回、ダークフェザーがアップタウンへ通行出来ないためムツキ、シャノワールと協力し合う。
ダークフェザーに『感謝』という気持ちを気づかせることが出来、アップタウンへと入ることに成功したのであった。


話は戻り。
バレンタインデーは、3人の話題の的だった。
しかし、3人は一体誰にあげるのだろうか?
ムツキは・・・ロウゲツかキクヅキにあげるだろうが、あとの2人はまったく検討がつかない。
もしかしたら校内唯一の男である私にくれるのではないのだろうか、っとそう思い快活よく学校へと行く。

ところが・・・

・・・。


私レーヴェリスは昼間だというのに街の中を走り周っていた。

「レーヴェリスちゃん!そっち行ったわよ!」
大きな声が向こうから聞こえてくる。
一匹の犬が猛スピードで私に向かって走ってきて、スルリと私の足元と捕まえようとした手をかわして後ろへと走り去っていた。

「あぁん、もうちょっとだったのに~」
残念がる先ほど声をあげた女性。
ツインテールおさげに黒のレオタードのようなセクシーな服、黒いマフラー。
悪魔の翼、頭にヤギのツノを生やした18歳ぐらいの女性。
彼女の名はキサラギ。

一見、怪しい服装で男を誘惑していそうな格好と口調だが彼女もまたムツキと同じ守護魔である。

去年の2月に出会った守護魔で
その時は、いつまで待っても現れない3月の守護魔ヤヨイを探すために協力したわけだが、彼女もムツキと同様にヒトトセの卵の『想いの力』と言われる不思議な力で人の姿になったのだろう。
そして、今年もキサラギによってある協力をさせられていた。

それがなぜ、私が犬を追いかけていることになるのか・・・。
それは数時間前に遡る。




2月B






2時間前・・・
チョコがもしかしたら貰えるのでは、っと快活よく学校へと来たわけだが
アミス先生が誰かと話し込んでいた。

そこにいたのは守護魔・キサラギであった。
ムツキからアミス先生の学校について聞いたのか「私も生徒にしてほしい~」と懇願していた。

もちろんアミス先生は了承したが・・・
キサラギは突然、まだ授業が始まってもいないのに「『恋愛』の授業をしま~す!」
と言い始め、今いるのは私レーヴェリスだけだが、私を引っ張り、街へと出て行った。


授業の内容を尋ねると
「今日はバレンタインデー、バレンタインデーと言えば?そう、とーぜん愛の告白よね!」
「恋人達の熱く燃え上がる愛と情熱のパワーで冬の寒さを吹き飛ばす!」
「それが2月の守護魔である、私の役目なの」
「だけど、女の子は男の子に告白する(チョコを渡す)のに、どうやって渡したらいいかためらってしまうもの」
坦々と言うキサラギ。

それで?っと私は言う。

「そんな、女の子達をうまくいくようにするのよ!」

何をそんな当たり前のことを、みたいに言われても・・・
何となくわかってはいたけど、それは流石にお節介では・・・
っと聞かずにキサラギは何かを木陰からこっそり見ていた。


「あっちの方に『トルテ』って子がいるわ」
「『ザッハ』って男の子に愛の告白をした(チョコをわたした)いんだけど、中々勇気が出せないみたいなのよね」
「まず、あの子がうまくいくよう応援しましょう!」


アップタウンの東側の白い聖堂の裏側にいるピンク色のファーコーデを着た少女、彼女がトルテで。
その少女が見つめる先にいる黒いジャケットに長い髪が目立つ少年がザッハか。


トルテはブツブツと1人で何かを言い何度も大きな息をついてはまた、何かを言っている。

・・・少し近づいてみるか。

「・・・きゅーじゅはーち、きゅーじゅーきゅ、ひゃく!」
「うん、今度こそいくわ・・・告白する・・・!」
「すー、はー・・・すー、はー・・・」

「・・・ザッハくん私のチョコケーキ受け取ってくれるかな・・・」
っと言い、少し考えてる・・・
「あ・・・あと百数えたら告白する・・・!」

どうやら、これを繰り返しているみたいだ。
この分だと陽が暮れてしまいそうだ・・・

「あの子よ、ね、初々しいでしょ?」
何故か楽しそうに言うキサラギ。

「思い出すなぁ・・・告白しようとして声をかけられなくてお兄様の後姿を見ていたこと・・・」
お兄様?ロウゲツのことかな?
「・・・って私のことはいいの」
「さあ、応援するわよ!」

う~ん、と言い少しうなだれるキサラギ。

「具体的に言うと、うまくいくように祈りながら邪魔しないように見守るのよ!」
つまり結局は私たちは何もしないんですね・・・了解。

「・・・きゅーじゅはーち、きゅーじゅーきゅ、ひゃく!」
トルテはまだ数えていた。

「がんばれ~きっとうまくいくわよ~」
ガッツポーズで木陰から見守るキサラギ。

「うん・・・きっと、きっと上手くいく・・・!」
「チョコケーキだって、割りと上手にできたもの・・・!」

トルテの手に持っていたのは、持っている手よりも少し大きめの立方体の白い箱に赤いリボンが巻いてある。
あの中に手作りチョコケーキがあるらしい。

・・・ん。
トルテの足元に小さな黒い人影が見える。


「くんくんくん・・・」
「おいしそうな匂い、この箱からするですか・・・?」

トルテが目をつぶって決意を固めているところを手に持っていたチョコケーキの箱をひょいっと取った少女がいた。


「あ・・・あのっ!」
「こ、こ、これっ・・・!」
トルテはまだチョコケーキが無いことに気づいてないらしく
ザッハにチョコをあげる練習をしていた。


(びくっ!)
少女は驚いた顔でトルテを見ていた。

「・・・え、あれっ?・・・チョコケーキがない・・・!」
「あ、あなたが持ってる、その箱はっ!」
「返して、大切なものなの!」
ようやく気づいたが・・・

「あっ、あっ・・・おっきな声」
「怖いです、逃げるです・・・!」
そう言って少女は走り去ってしまった。

「待って・・!」
「あっ!」
ずて~ん!と音を立て盛大にこけたトルテ。

「そ、そんなぁ、こんなことって・・・うぅ・・・ぐすっ・・・」
そうしていたら少女はあっという間にいなくなっていた。

「・・・もうダメだわ・・・ぐすっ、ぐすっ・・・ふぇぇ~~ん!」
ついに泣き出してしまった。

それを木陰から見ていたキサラギはというと・・・

「な・・・なんなのあの子!」
「告白タイムの女の子からバレンタインのチョコを奪っていくなんて・・・!」
「ありえない、人としてありえないわ!」

怒りが頂点に達していた・・・
いや、もはや燃えている!?


「絶っっ対、許せない!」
「追いかけるわよ!チョコを取り返すの!」

あぁ・・・やっぱり私も行くのですね・・・
わかってはいたけどね・・・
そう思いながら先ほど少女が走って行った跡を追った。


チョコを持って逃げたその少女は、以外にもすぐ近くの曲がり角にいた。


「くんくんくん・・・ぺろぺろ・・・」
「おいしい~においだけど周りはおいしくないです」
「中がおいしいです・・・?」
箱をペロペロと舌で舐めていたが「うぇ」と吐き気をするような顔で再び
匂いをかいでいた。

ついにその少女は・・・
(べりべり)
と包み箱を破る音を立て中身を出してしまった。


「食べちゃだめっ!」
静止させようと大声でキサラギは、少女に警告した。

「それを返しなさいっ、チョコどろぼう!」

よく見ると、その少女はダークフェザーと同じくらいの幼い9歳ぐらいの少女だった。
垂れた犬のような耳に可愛らしい犬の肉球模様の袖をした青い服を着ている。
手には古びた看板のようなものを持っていた。


「わぅっ?!」
驚いた少女は光と共に違う姿へと変身した。

それは見間違えることがなく「バウ」だった。
アクロニア周辺に生息していて初心冒険者たちに群れで襲いかかる犬のモンスターだ。


「えっ!?」
「い、今の子はいったい?あ、もしかして!?」
「そっか、あの子もムツキが言ってた『アルマ』なのね!」
「ヒトと同じ心をもっててヒトと同じ姿に変身できるっていうけど・・・」
「ううん、女の子の告白を邪魔するだなんて、ヒトの心があったら絶対できないわっ!」
っと言っている間に逃げられてしまった・・・
しかも器用にもチョコケーキを頭に乗せたまま。


しかも今度は、人通りが多い商店街区へと走って逃げていった。
今度は犬の姿だし見つけるのは人苦労だなぁと思うがキサラギの怒りは止まらず。
その犬の少女を追いかけることにした・・・




2月D





これが成り行きであり今に至る。
少し長くなってしまったが犬を追いかける理由がこれだ。

しかし・・・ひょいひょいっと人と人との足の間を華麗に避ける犬の少女、もといバウは
私とキサラギで捕まえるのに苦労していた。
捕縛魔法や攻撃魔法、またはそれに類する技を使うなら早いが人通りが多い街の中で使うわけにもいかない。

キサラギも何回も先読みしてテレポートをおこなうが逃げられてしまう。

「見つけたわっ!大人しくしなさい!チョコどろぼう!」
がっつしっと尻尾を握ってキサラギは叫ぶ。

それが聞こえて私もようやく捕まえたかと思い駆けつけたら・・・
いや・・・違う人だし・・・しかもキサラギは気づかない。

丸メガネをかけた猫耳、どこから見ても犬の尻尾ではなく猫の尻尾にリボンをつけた
ミニスカートの少女。
この少女もどこかで見たような・・・

「えっ?・・・どろぼう?」

「ふふっ、いくらヒトの姿に化けても、キサラギ様の目はごまかせないわ!ほらっ!」
キサラギが握っている尻尾をレーヴェリスに向けて引っ張る。
というか、キサラギさん彼女のスカートの中身が丸見えですよ・・・

「きゃっ!なになに!?」
間違えられた少女は慌ててスカートを抑える。

「ふふっ、頭隠して尻尾隠さずね」
やっと尻尾を離すと次ぎは・・・

「さ~て、チョコはどこに隠したのかしら、仔犬ちゃん?」
間違えられた少女の体を触りまくりチョコを探すキサラギ。


「く、くすぐったい~!」
「あたしイヌじゃないよ!やめて~!」

「あら?そういえば、しっぽの形が違うような・・・?」
ようやく気づいたころには、間違えられた人は悶え死んでた・・・


「・・・あ、あはは」と苦笑いをするキサラギ。

「ごめんなさい、人違い・・・だったのね」
「ところで、あなた仔犬か仔犬っぽい女の子見なかったかしら?」


「仔犬?女の子?」
「犬だったらさっき、あっちの方に走っていったよ?」
っと指をさす方向は商店街区の路地裏の方角だった。

「チョコどろうぼうはあっち、と・・・」
「確か、この先は東可動橋のほうまで一本道だったわね・・・」
もしかしたら挟みうちに出来るかもしれない。

そう考えたキサラギは
「私は先回りするから、あなたたちはこっちから追いかけて!はさみうちよ」


「・・・・」
少し間が止まった。

「えっ?あなた『たち』?」
「わたしもお手伝いするの?」
返事をしないままキサラギはテレポートで消えていた。

『間違えられた少女』もとい今度は『巻き込まれた少女』は私が経緯を説明して協力するように頼んだ。




2月E




アップタウン商店街区の路地裏は表と違い人は
ほとんどいないし建物で1日中太陽の光が差し込まない場所もある。

ガターン!とゴミ箱を吹き飛ばしながら逃げるバウ。
それを追うレーヴェリスと巻き込まれた少女。

だが今度は逃げられるはずもない。
目の前にキサラギが立ち足元をかわして逃げるにも路地裏は狭過ぎる。

観念したのか建物の影に身を潜めたバウ。

「ふふっ、もう逃げられないわよ!」
キサラギはじわりじわりっと間合いを詰めながらバウに寄る。

「に、にげられないよ~」
「だから、あばれないでね~?」
巻き込まれた少女も詰め寄る。


「くぅんくぅん・・・」
っと鳴きながら後へと下がるバウだがもう後は壁だ。
よほどチョコケーキを渡したくないのか・・・


「さあ、チョコケーキを返しなさい」
「それは、あなたが食べていいものじゃないの」
「一年に一度のこの季節に内気な女の子でもチョコを渡すだけで、好きな男の子に想いを伝えられる・・・」
「そのチョコケーキは人の想いが詰まった、とても大切なおくりものなのよ?」
キサラギは説得する。


「それに、犬はチョコ食べるとおなかが痛くなっちゃうから絶対食べちゃダメなんだよ~!」
巻き込まれた少女も。

確かチョコに含まれる“テオブロミン”といわれる成分が犬に有害だといわれている。
犬によって個体差はあるけど死ぬことも稀にあるようだ。

「!?」
「おなかいたいの、いやです」
犬のバウから人の姿へと戻った。

「チョコ、こわいです。ぶるぶる・・・」
少し体を振るわせる。

「でも、ぼくはとってもおなかがすいてるです・・・」
ぐぅ~~っと何とも言えぬ腹の音が響き渡る・・・。

「だったら私と一緒にいらっしゃい」
「もっと、おいしいご飯を食べさせてあげるから、ね?」
まるで仔犬を拾うかのように優しく言うキサラギ。


「ごはんくれるですか!?」
「もしかしていい人ですか!?」
目を輝かせキサラギに寄る犬の少女。
犬の少女はチョコケーキをふと見て、次は巻き込まれた少女を見る。

「チョコケーキはお姉さんにかえすです」
そう言い巻き込まれた少女へと駆け寄る。
どうやらチョコケーキの持ち主トルテを巻き込まれた少女と勘違いをしたらしい。

「あっ!その子は、トルテちゃんじゃ・・・」
キサラギが止めようとした瞬間だった。

最悪の展開が起こってしまったかもしれない。

「えっ?・・・あっ!」

(ぐしゃ)

それは、もう小気味良いくらいのひしゃげた音。
やわらかいトマトを床に落としたような。
その(ぐしゃっ)もしくは(グシャっ)という音は、その場にいた誰もが聴いただろう・・・

何が起きたのか。
それは・・・
呼び止められた犬の少女は止まらずに顔だけキサラギに向けた為、前を見ずに巻き込まれた少女へと直進。
当然、犬の少女が手に持っていたチョコケーキは巻き込まれた少女と衝突をしてしまった。

その(ぐしゃっ)とした音は、そのチョコケーキが潰れてしまった、その音である。


巻き込まれた少女の服はチョコで汚れてしまったが、何よりも大変なことしてしまったっと気づいたのは、
何が起きたかわからない犬の少女以外の3人である私とキサラギ、巻き込まれた少女である。


「あっ、ああああああ!!」
「つ、潰れちゃった!」
この悲鳴で全員、我にかえる。

「つ・・・つぶれちゃった・・・の?」
「女の子の想いが詰まった大切なチョコケーキが・・・」
キサラギは残念そうに潰れて地面に落ちたチョコケーキを見続ける。


「ごめんなさい・・・うぅ・・・ぐすっ・・・」
巻き込まれた少女は泣き出す。
無理もない、キサラギが無理やり巻き込んだあげく他人のチョコケーキを潰してしまうことになろうとは・・・

「泣かないで、あなたは悪くないの!」
「悪いのは・・・そう!」
「あなたを巻き込んだこの私と、主にレーヴェリスちゃんだから・・・ね?」
キサラギは慰めながら巻き込まれた少女の服についたチョコケーキを魔法で洗い流した。
一瞬で服は綺麗になったが心は直せない。

っておい、キサラギさん?
主にって・・・


「ぐすっ・・・でも・・・」
『罪悪感』その3文字が彼女の中で消えない限り決して泣き止むことはないだろう。


「どうして泣いている、ですか?」
「おなかすいたですか・・・?」
泣いている顔を手で隠す巻き込まれた少女を下から見上げる犬の少女が不思議そうに言う。
どうやら何が起きたのか理解していない模様だ。

「とにかく皆、一緒にいらっしゃい!」
声を上げてキサラギは犬の少女の襟元をぐいっと掴みズルズル引きずりながら歩いていく。
犬の少女は「くぅ~~ん?」と不思議そうな顔で引きずられて行った・・・

レーヴェリスは泣いている巻き込まれた少女の肩に手をポンッと置き無言で誘導する。




2月F





キサラギが2人を招いた場所はアミスの学校だった。
朝以来だろうか、ここへ戻ってくるのは。
朝と違うのは、そこにシャノワール、ムツキ、ダークフェザーがいたからだ。
もう昼だから当たり前なんだけどね・・・。


「アミス先生、ちょっといいかしら?」
「この子たちなんだけど・・・」
キサラギは授業中のアミス先生に助けを求めた。


「あら?キサラギちゃんの新しい友達・・・?」
「ようこそ、私の飛空庭へ」


戻ってきた4人を見たアミス先生は驚いただろう。
1人は今は泣き止んでいるがずっと下を向いたまま気落ちした猫耳の少女。
1人はキサラギが逃がさないように襟元を掴んでいる犬耳の少女。


「おなかすいたです、ぺこぺこです・・・」
(ぐぅ~ぐぅ~)っとすごい腹音を鳴らしながら横たわる犬の少女。
空腹で今も死にそうな勢いだ。

それを見たキサラギはようやく犬の少女の襟元から手を離す。
「えっと、ちょっと訳ありの子で・・・」
「先生、まず何か食べさせてあげて?」


「お腹がすいているのね?」
「あなた、お名前は?」

「ぼくはバウです」
横たわりながら言う。
しかし、思っていたとおり名前はバウ・アルマだったのか。

「!?あなた私と同じ・・・?」
ダークフェザーはジーっとバウを見る。

「バウちゃんね」
「待ってて、すぐに何か作るわね」
アミス先生は調理を始めた。


アミス先生が料理を作っている間。
ようやく巻き込まれた少女は顔を上げた。
「・・・あっ!黒ねえさん!」

巻き込まれた少女が指をさしたのはシャノワールだ。

「・・・!くる・・・!」
「・・・コホン、我が妹よ!こっちへ・・・!」
巻き込まれた少女とシャノワールは奥のほうでヒソヒソ話を始めた。

「ムツキ、ちょっと・・・」
キサラギもムツキを呼び反対方向でヒソヒソ話を始めた。

「・・・無事でよかった・・・」
「・・・なちゃんは・・・?」
「・・・いや・・・まだ・・・」
「・・・ここにいたら・・・」
「・・・違う名前を・・・」
と微かに聞こえてたシャノワールたちの会話。


「・・・フェザーと同じ・・・」
「・・・あの方も心を・・・」
「・・・まだ、善悪が・・・」
「・・・はい、教えないと・・・」
こちらも微かに聞こえたキサラギたちの会話。
バウのことについて話していることはわかるがシャノワールたちは何を言っているのかわからなかった。

数分後、料理が出来みんなで食べることに。
遠慮なしにバクバクと食べるバウ。
それを見ながらダークフェザーはゆっくりと落ち着いて食べている。
私も一緒に食べヒソヒソ話をしている4人2組は、会話に夢中らしい。
そして、ようやく食べ終わる。

「・・・おなかいっぱいです!」
「アミス先生、だぁーいすきっ!」
満腹になったバウはご機嫌が良くなりアミス先生に抱きつく。

「バウちゃん?バウちゃんが良ければ」
「ずっと、ここにいていいのよ?」
アミス先生はバウも生徒にする気らしい。

「アミス先生の生徒になって、人の・・・この世界のことを、たくさん学ぶといいですよ!」
ムツキも誘う。

「わかりました!」
「ぼくもアミス先生の『せいと』になるです!」

「あっ、あたしも、く・・・シャノワールおねえさんと一緒に、生徒になりたいです!」
巻き込まれた少女も慌てて入学する。

「もちろん大歓迎よ!」
「それで、あなたのお名前は?」

「く・・・えっと、『みるく』です」
巻き込まれた少女、改め『みるく』となりましたが、両者必ず『く』が来て言い間違えそうになるのはなんでだろうか・・・?

「シャノワールさん、妹さんが見つかってよかったですね!」
笑顔で言うムツキ。

「ああ、他の妹たちもいつかきっと・・・」


「それじゃ、さっそく最初の授業ね」
アミス先生の授業がようやく再開される。

っと思ったらキサラギは手を挙げて。
「バウちゃんにはまず人のものを勝手に取ったらダメ!」
「ってことを教えてあげないと!」


「えっ?どういうことなの・・・?」
アミス先生は驚くと共に疑問を感じた。

キサラギは何が起きたかを説明した。
トルテのこと、ザッハのこと、その告白を邪魔したチョコどろぼうの正体がバウだったことも。
巻き込まれたみるく、潰してしまったチョコケーキの存在。
そして、これからどうするべきか。

もちろんバウは元が犬のモンスターだということ以外は・・・

「人が持っているものを勝手に取るなんて」
「あなた、バカなの?」
ダークフェザーは冷静にバウに諭す。

「くぅ~~ん・・・」
しょんぼりするバウは地面に顔を向ける。


「人の贈り物をダメにしちゃったのなら・・・・」
「そうね、おわびのおくりものをしてみたらどうかしら?」
アミス先生の提案にレーヴェリスや他の生徒たちも賛同した。


「おわびのおくりもの?」
バウはそれが何かわからない。

「チョコケーキをダメにしちゃったから、代わりをあげたら許してくれるかなぁ?」
みるくは少し不安気に言うが、これしか方法はないっと確信した。

「それはどうかしら・・・」
「あれは世界にたった一つだけの手作りチョコケーキなの」
「代わりになるチョコケーキなんて、あの子以外、作れないわ」
キサラギは反論をする。

「ぐす・・・あたしのせいで・・・・」
あの時を思い出しまた泣きそうになるみるく。

「あ・・・!え・・えぇと・・・」
慌てて何か別なことを言おうと焦るキサラギ。

「大丈夫ですよ、みるくさん」
「きっと、何かいい方法がありますから」
代わりにムツキが慰める。

だが、1度失くしたものを再び手に入れるのは難しいのも事実。

「・・・世界にたった一つだけに手作りチョコケーキは確かに取り返せない」
「だが、チョコケーキをもう1度作ることなら不可能じゃないだろう?」
「トルテがもう1度、手作りできるようにチョコケーキの材料や調理道具を揃えてあやまってみたらどうだ?」
シャノワールはみるくをフォローするように皆を説得する。

「黒おねえさん・・・!」

「シャノワール、だ」
「く・・・みるく」
即座に訂正を入れるシャノワール。


「ふふっ、甘いわねシャノワール」
「チョコレートより甘いわ!」
キサラギはニヤリと笑う。


「なに・・・?」

「お詫びっていうのは、相手にどうして欲しいか聞いて出来るだけ希望通りにしてあげるべきじゃない?」
キサラギの言うことも一理ある。

「むっ・・・確かに・・・」


「まあ、このキサラギお姉さんにはトルテちゃんの希望はお見通しなんだけど、ね?」
「トルテちゃんに必要なのは、私みたいなオトナの魅力よ!」
「だから、私がコーディネイトしてあげれば・・・ふふっ、楽しみね!」
もはやバレンタインデーではなくなっています。
っというよりキサラギの希望になっているような・・・


こうして、代わりのチョコケーキを作ってもらうか
キサラギの言うコーディネイトで告白を決めるかの2択になった。


さて、どちらを選ぼうか・・・



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アルマたちと絆の樹 プロローグ~第1章 

アルマたちと絆の樹(小説)

序章

2011年。
トロン博士が発見した不思議な卵を巡り様々な守護魔たちと出会いと騒動が起こる。
やがて不思議な卵の正体と守護魔たちの役目が明らかになり新しく誕生することが出来た守護魔・ウルゥ。

そして、無事に2012年の年を明けることになった。

・・・しかし・・・




アクロニア大陸中心の貿易都市アクロポリスシティその地下遺跡の奥の奥にて。

「ウルゥ様、予想通り現れました」
静かな地下神殿に響く声の正体は執事服姿の守護魔ロウゲツ。

「ええ、でも大丈夫。あの子たちならきっと・・・」
優しく微笑む新しく誕生した守護魔を統べる守護魔ウルゥ。




2012年になったアクロニアに再び事件が起きる・・・


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Reyvellis・E・Calegiel

Author:Reyvellis・E・Calegiel
短称:レーヴェリス
呼称:レヴェ

エミル・クロニクル・オンライン

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